第二回全国医療AIコンテスト

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2020年9月26日,27日の2日間でAI&Machine learning Society(AIMS)主催 「第二回全国医療AIコンテスト 2020」 を開催しました. 本記事はその記録です.

arailly.hatenablog.com

 

 

第二回全国医療AIコンテストとは

2019年から始まって第二回となった全国医療AIコンテストです.医療AIに興味のある学生が集まって,AIを応用した医療・介護・ヘルスケアの最先端についての講演会と 医療データ解析コンペティションを行いました.

今回はコロナの影響でオンライン開催となってしまいましたが,100名以上の沢山の方が参加してくださり大変嬉しいです.

オンライン開催ということで気軽に参加しやすいということもあり全国から参加していただけました.

今回のイベントは,以下の団体・企業様にご支援いただきました. この場をお借りしてお礼申し上げます.

共催(敬称略):

  • 阪大医学部Python
  • コンソーシアム関西

協賛(敬称略):

特別協力(敬称略)

  • ナレッジキャピタル

講演

Bioinformaticsで疾患の遺伝要因と環境要因を明らかにする」
大阪大学 免疫学フロンティア研究センター 実験免疫学 安水 良明 先生

疾患を遺伝要因と環境要因に分け,それぞれについてゲノム解析(RNAseq)を行って要因に関して解析をしていました.

適応進化(環境によって適応するために行う進化)は食生活と密接に関わっており,それをゲノム解析によって明らかにしているのが興味深かったです.

また,自己免疫についても環境要因も考えなければならなく,新型コロナウイルスの感染状況も地域によってかなり異なるのも関係あるのかなと素人ながら思ったりしました.

「胎児心臓超音波動画における心室中隔領域検知」
国立がん研究センター研究所/慶應義塾大学医学部 同前 愛 先生

先天性心疾患(CHD)の中で最も多い原因である心室中隔欠損(VSD)を機械学習によって検知しようとする試みでした.

超音波画像から解析というのは画像にノイズも多く難しそうだなという印象でした.

方法としては,普通のセグメンテーション(U-Net)だけでなく,キャリブレーションモジュールを用いて時系列の前後情報を用いて補正を行っているのが興味深かったです.

医療の可能性を切り開く機械学習・AIサービス、そしてクラウド
アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社 遠山 仁啓 様

 AWS機械学習用サービスであるSageMakerを中心に企業での医療AIの活用例などを講演してくださいました.特定の業種向けにプラットフォームを展開しないAWSさんがメディカル向けでのみサービスを出しているのが意外でした.Amazon Comprehend Medical, Amazon Transcribe Medicalの二つは知らなかったのでためになりました.

先端技術がもたらす「より良い医療のかたち」
日本マイクロソフト株式会社 清水 教弘 様

Microsoft Azureを用いて医療向けにどのようにAIが活用できるかを講義していただきました.

特に印象的だったのは,患者との診察を音声認識から自動でカルテを作成して,その会話の中でどのような病気の疑いがあるかまで推測してくれるのは,ここまで完成されているのかと感心しました.

また,Microsoft Hololensを用いて妊婦に今胎児がどのような状態なのかを可視化する試みは面白いと思いました.

医用画像からゲノム解析までAIで加速するーClaraプラットフォームのご紹介
NVIDIA合同会社 阮 佩穎 様

Nvidia社が提供する医療画像向けのAIプラットフォームClaraについて講演していただきました.

Nvidia社が医療用の学習済みモデルを無料で公開していただいているので,アノテーションが画面を数点クリックするだけで簡単にしてくれるのが印象的でした.

また,Federated Learning(連合学習)を用いることで,各病院がデータを共有することなくネットワークの重みだけを共有して学習する試みは面白いと思いました.

精度が下がるのでは?という疑問はありましたが,エピソード数が増えるとデータを一ヵ所に集める場合と同等の精度を出しており,これから発展していきそうだと感じました.

医療機器プログラムの製造と承認について
Lpixel株式会社 袴田 和巳 様

医療機器プログラムとは何か,また医療機器プログラムと承認されるためにはどうすれば良いのかについて講演していただきました.

医療機器としての承認を得るためには,製造体制を整えることや,その機器が効果効能があることを証明なければならないということでした.また,万が一問題が発生した場合でもリスクが効果より上回るということを証明しなければならないということで,自分の全く知らない知識だったのでとても勉強になりました.

 「医療データを用いたAIコンペティションについて」
大阪大学医学部附属病院 秋山 理 先生

大阪大学医学部附属病院研修医,Kaggle Masterの秋山さんによる, 医療データコンペの概要と,それに対する解法や取り組み方についてのお話でした.

 医学生・医療従事者など,非専門家がデータサイエンスを学ぶのにコンペに参加するのが最適だということ, そしてコンペを通して得られた,医療データを解析する難しさなどの知見を共有していただきました.

医療データ解析コンペティション

概要

今回のコンペティションのテーマは,「COVID19による死亡予測」でした.

データの出典は以下ですが,コンペ期間中は秘匿していました.

www.gob.mx

秋山さんがEDAからモデリングまでのベースラインのコードを用意してくださって,それをみんなで精度を上げていくという流れでした.

ベースラインがすでに用意されているので,初心者でも取り組みやすい内容だったと思います.しかし,秋山さんのベースラインがすでに完成されていて結構工夫しても精度がなかなか上がらないといった感じでかなり苦戦していました.

ちなみに,作問自体には僕は関わっていなかったため僕も参戦していました!

解法

今回は特徴量生成を頑張ってもなかなかうまくいかず,秋山さんもたくさんの特徴量を試していたそうなのですが,精度は上がらなかったそうです.

じゃあどうすれば良いのかというと,入賞した方々は決定木ベースのモデルとNNベースのモデルをスタッキングなどの手法を用いてアンサンブルするのが効果があったようです.

1st placeの方はpsude labelingを用いて精度を上げていたので,なるほど!といった感じでした.

ちなみに僕は2位で入賞という結果でした.僕の解法を一応載せておきます.

 

 

イベント運営の反省点

オンラインということもあり,心配していたのですが大きな問題はなく成功だったと思います.細かいところで反省点を述べておきます.

  • 学生(僕)の司会がうまく回っていない場面があった
  • 質問時間をうまくとれていなかった
  • ウェビナーのQ/Aをうまく活用するべきだった(チャットで質問はわかりにくい)
  • サークル紹介の場面で質問時間をもう少しとるべきだった
  • 学生間の交流を取る時間がもっとあってもよかった気がする
  • コンペに関してチームマージする人が少なかったので,交流がやはり少なかったと思われる.

全体を通して

 去年とは違い,オンラインで不安な部分もありましたが,多くの方に参加していただいて大成功に終わったと思います.

また,講演についても学生では学べないような内容で非常に勉強になりました.

コンペティションに関しては去年も参加してくださった方もいて,懐かしい感じでした.サークル紹介などを通じて学生同士で交流できたのも楽しかったです.

運営メンバーの皆様,AIMS顧問の新岡先生,登壇者の皆様,共催・協賛・特別協力の団体・企業の皆様, この度は本当にありがとうございました.